旧鐙屋(酒田市)概要: 旧鐙屋は山形県酒田市中町1丁目に屋敷を構えている古民家です。旧鐙屋は酒田を代表とする廻船問屋で、江戸時代に井原西鶴によって書かれた『日本永代蔵』には「北の国一番の米の買入れ、惣左衛門といふ名を知らざるはなし」と鐙屋の事を紹介しています。
酒田では豪商36人による半自治組織のようなものが存在し、鐙屋を始め本間家などが町政を司り酒田三十六人衆などと呼ばれ大きな影響力がありました。
現在の旧鐙屋の建物は弘化2年(1845)に火災後建替えられたもので、切妻妻入り、屋根は石置杉皮葺屋根となっていて、当時の酒田の町屋建築の典型とされます。一般的の町屋は店部分が道路に面している場合が多いのですが、この建物では道路面には長塀が設えられており、直接内部には入れず、建物左側の木戸門を通ってから玄関へ入ります。
問屋という商売は特に店を広げる必要がない職種だった事と塀を持つ事がある種の特権意識の表れなのかと思わされます。良く雪国に見られる「こみせ」などのアーケード空間がないのは敷地が広く、店部分が直接隣接する他店舗と離れているからなのかも知れません。
又、旧鐙屋の敷地は江戸時代当初に比べると4分の1程度に縮小されていますが、最大で表口三十間、裏行六十五間だったとされます。旧鐙屋は商業都市酒田を代表する豪農の屋敷として大変貴重な事から昭和59年(1984)に国指定史跡に指定されています。
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