旧千歳館(山形市)概要: 旧千歳館は明治9年(1876)に開業した料亭で、最盛期には映画館や植物園なども経営するなどしていました。当地は古くからの繁華街で、政治家も度々利用したとされ、明治19年(1886)には当時の県令柴原和も訪れ去り際に「千年の歳月が流れても栄え続けるように」と感謝の意を述べた事から「千歳館」に店名を改称したそうです。
現在の建物は明治44年(1911)の薬師大火で焼失した後、大正4年(1915)に建てられたもので、木造2階建て、寄棟、鉄板葺、平入、建築面積380u、外壁が青く塗られているのが印象的です。
時代背景から、和風建築の中に洋風の要素を取り入れ、縦長の開口部や、軒下の持ち送り、特に玄関ポーチには神殿風の柱やアーチ、建具の細かな細工、天井照明周りの意匠などにそれらの傾向が見られます。玄関上部の2階の開口部は密にし中央部のみ高く設定しアーチ風の小庇を設える事で建物の正面性を強調しています。
現在は和風レストランとなっていますが、当時の料亭建築の粋が随所に見られ貴重な文化財となっています。旧千歳館は大正時代に建てられた数少ない料亭建築の遺構で「再現することが容易でないもの」との登録基準を満たしている事から平成14年(2002)に国登録有形文化財に登録されています。
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