旧武田家住宅(楢下宿)概要: 武田家は楢下宿の新町に位置し、宝暦8年(1758)に描かれた楢下宿の屋敷割絵図に「旅籠屋」と記載されている事から少なくと是以前から旅籠を営んでいたと思われます。旧武田家住宅は台所部の改修工事の際、宝暦9年(1759)の墨所が発見されている事から竣工はこの年代前後と考えられ、建築年代明確な点でも貴重な存在といえます。
建物は木造平屋建て、寄棟(北側の張り出し部分は切妻)、茅葺、平入り、外壁は真壁造り、土壁仕上げ(北側の張り出し部分は板張)。農家建築と町屋建築の両方の特徴があり、外観は農家建築に見えますが、正面入口からは建物奥まで続く土間の通り庭があり一番奥には「うまや」が設けられています。
内部は街道側の正面に板張の廊下があり、その後ろに「じょうだん」、「なかま」と呼ばれる座敷(床は板張に茣蓙敷)が平行して配されています。その奥の「ざしき」は「どさ」とも呼ばれ、現在でいう居間の役割があるところで、床は土間でその上に茣蓙を敷いて生活し同じく土間の「だいどころ」と一体に利用していたようです。
ただし、「ざしき」と「通り庭」と「だいどころ」の間には下がり壁が設けられ明らかに差を付け空間的に明確にしています。旧武田家住宅は江戸時代中期の旅籠建築の遺構として貴重な事から平成7年(1995)に上山市指定有形文化財に指定されています。
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